海賊船に拾われ、男の名を名乗っていたのは男装の美少女だった――
板東いるか先生の漫画「わが愛しの女海賊(レディ・バッカニア)まんがグリム童話シリーズ」は、海賊船の船長・リチャードとわけあって男の子のフリをしていた少女・メアリとの切ない愛の物語です。
こちらではあらすじと感想をご案内します。
「わが愛しの女海賊(レディ・バッカニア)」のネタバレ
ドクロの旗をなびかせる海賊船に海を漂流していたジョン・テイラーが拾われて、水夫として使われていた。
金色の美しい髪、中性的な顔立ちの少年は、まるで「女」のように見えた。ジョンはなぜか、夜毎に悪夢を見てうなされる。
船長のリチャードはその美しさに惹かれ、男と知りつつも愛を感じる自分に戸惑っていた。
だがある日、襲った船のトラブルでジョンが海へ落ちて助けたリチャードは、ジョンがじつは「女」だったと知る。
なぜ自分を騙した、と怒るリチャードに、ジョンは自分の本当の名は「メアリ」であること、そしてイギリス軍の隊長・ヘンリーに自由と尊厳を奪われ、「女でいたくない」と思うようになった忌まわしい過去を語り・・・
他、収録作の紹介
この作品は短編漫画集になっており、表題作のほかに3つのお話が収録されています。どのお話も、強くそして破滅へと向かった女性たちの物語になっています。
それぞれの簡単なあらすじをご案内しますね。
「西太后」
息子を愛するあまりに狂気に走った中国の女帝・西太后が、自らの帝国を滅びへ導く。
「ルース・エリス」
女クラブ・マネージャーがのめり込んだ、若い男・ディビットとの火遊びの恋が執着に変わったために起こった悲劇を描く。
「阿部定 艶恨録」
吉田屋の内儀の視点から見た、阿部定 という女の不気味さと魔性の女に魅入られた男の末路。
「わが愛しの女海賊」の感想
とても切ないお話だけれども、「海賊」という言葉にはワクワクしますね。
隻眼の海賊船の船長・リチャードの男臭さと海の男としての魅力。
そして、思い出したくもない忌まわしい過去から逃げてきたジョン・テイラー=メアリ。
メアリは男性にひどく怯えざるをえないような耐え難いトラウマがあり、自分が女性であることを否定して「少年」のフリをして男装していたわけです。
(ヘンリーがキモすぎて、たしかにトラウマになるわ)
ふたりが海の上で出会ったことで、メアリは「ジョン・テイラー」ではなく、本来の「メアリ」に戻って、愛する男性を得てやっと自分が「女性」であることを喜ぶことができて・・・すごくロマンチック♡
メアリのトラウマの原因となったヘンリーとの対決では、「俺の女だ!」と叫ぶリチャードがかっこよすぎ。
愛する女を守るために、命をかけて戦うパイレーツって最高です。
(ヒゲのむさいオッサンはタイプじゃないのに、「海賊」って思うとかっこよく見えちゃうのかしらー!)
リチャードの心の伴侶となったメアリもまた、「女海賊」としての意地を見せて活躍して、「わが愛しの女海賊」というタイトルのフレーズの意味もわかりました。
ふたりの愛は、心で結ばれて永遠ですよね・・・。
ああでも、切ないなぁ〜。
ハッピーエンドと言えば、ハッピーエンドなんだけれども。
パイレーツものが好きなひとに、とくにおすすめしたいお話でした。
板東いるか先生の絵がとても綺麗なのと、キャラの表情がすごくよくて心情が伝わってきました。
ほかに収録されている作品もクオリティが高くて、満足がいく短編漫画集になっています。