無理矢理にでも「愛している」と言わせないと、安心できない歪んだ愛――
息苦しいほどの愛情で執着し、妻を束縛する嫉妬深い夫。
小岩井ゆば先生の漫画「うちの夫は、私を異常に愛している」は、一見幸せな結婚をしたように見える夫婦が、支配し支配される側といういびつな関係を結ぶお話です。
夫・冬樹の執着と束縛は、弟である秋良が妻に近づいたことでさらに深くなり・・・
こちらでは1巻のあらすじと感想をご案内します。
「うちの夫は、私を異常に愛している」のネタバレ
専業主婦の立花由利子は、友達から「イケメンエリートで妻を愛する素敵な旦那と結婚」したと羨ましがられていた。
そう。好きで結婚したはずなのに・・・その結婚生活はとても歪んでいた。
常に自分の行動を見張り、嫉妬深く、ほんの少しでも由利子の意識がほかへ向くのを許せない夫・冬樹の異常なまでの執着心のせいだった。
冬樹は由利子の匂いをかぎ、誰と会ったのか問い詰め、何も悪いことをしていないのに罪人のような気分にさせる。
冬樹の母親が亡くなり、父親違いの高校生の弟・秋良が突然、家に居候することになった。
秋良とは偶然、夜の街で出会っていたが、冬樹にそれを知られれば何をされるかわからない。
冬樹と違い、秋良はチャラい雰囲気で由利子になつきはじめるが、冬樹が見逃すはずもなく・・・
複雑な家庭環境の立花兄弟
立花家の兄弟は、父親違い。秋良は高校留年中のプーで夜遊び好きなチャラ男。
母親の最初の夫は冬樹の父親で、ものすごいDV男。幼かった冬樹は母と共に父親に虐待されていた記憶があります。
その遺伝子が引き継がれたのか、冬樹もまた、大人になって妻を束縛し半ば暴力をふるう夫になっているのは皮肉ですね。
再婚した母はその相手とのあいだに秋良を産み、DV夫によく似た面差しの冬樹をうとんじはじめ、愛情が弟へ移ってしまったことが異常な束縛愛のはじまりを思わせます。
「あなたが一番大事」「愛している」
母が向けてくれた自分への愛情が、弟にとられたことがトラウマになり、「妻」に母がくれなかったぶんの愛情を求める冬樹。
「うちの夫は、私を異常に愛している」の感想
ヤンデレ夫・冬樹の「今日の予定が更新されていない」でゾッとしてしまいました。
タブレットで妻の一日の予定を時間刻みで報告させるのを、当たり前のようにチェックしてましたよね・・・
「見捨てられ不安」と言うのでしょうか。
愛を取られてしまうかもしれない、と少しでも不安を感じるたびに由利子に対して「体でわからせる」のが恒例行事。
由利子はなすすべもなく、冬樹が望む「愛している」という言葉を言わされ、やっと彼は安心してくれるという寸法。
あの、全身の歯型・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
逃げればいいのに、DVモラハラ夫となぜ別れられないのか。
そうした妻の心理状態がリアルに描かれており、由利子は何も悪くないのに「あのひとを不安にさせた私が悪い」という思考回路になっていて冬樹がひどいことをするたびに自分をそう納得させています。
傍からみれば「そんな怖い夫から、早く逃げて!」と思いますが、当事者はある種のマインドコントロールというか、夫の支配欲と執着愛にあてられて正常な判断力を失ってしまうのかもしれません。
夫の異常な愛情から逃げたい、と思っているのに怖くて逃げられない由利子は、愛されて育った素直な秋良に次第に惹かれずにはいられないわけで、あっという間の三角関係に。
内容が内容だけに、読み手を選ぶ内容ですがヤンデレ系束縛男の病みを見てみたい!という方や、過去にDVモラハラ男に悩まされた経験のある方ならよりリアルに感じられると思います。