30歳ニートが軍事企業で才能を発揮する人気作『マージナル・オペレーション』から、時代をさかのぼり日露戦争に出征したアラタのご先祖?らしき人物・新田良造を主人公とする壮大な建国記!
漫画版「マージナル・オペレーション前史 遙か凍土のカナン」(原作・芝村裕吏/作画・橋本晴一/キャラデザ・しずまよしのり)
戦争が終わり、存在価値が低下した騎兵大尉。
愛した女に捨てられ、傷心の良造のもとに、はるかロシアの果てから日本へやってきた金髪の公女からのいきなりプロポーズ!?
「マージナル・オペレーション前史 遙か凍土のカナン」あらすじ・ネタバレ
明治末期、満州での黒溝台会戦でロシア騎兵を下した大日本帝国だったが、機関銃が騎兵に取って代わられる結果となり騎兵の存在価値を毀損した。
大尉に昇進した新田良造は、戦争のなまなましい傷跡と嫁にしようと思っていた女・藤子の裏切りに苦しみながら騎兵の訓練監督をする日々。
ある日、うら若い異国の金髪美少女・オレーナが訪れ、没落した家の再興目的でコサック騎兵を打ち破った勇敢な騎兵の血を取り入れるため、良造と結婚すると言い出す。
良造は「結婚」は辞退したが、オレーナを幸せにするために力を尽くすと誓い、彼女をロシアへ送り届けようと決める。
「凍土のカナン」の登場人物
新田良造:日露戦争後、中尉から大尉へ昇進した騎兵。帰国後は騎兵の訓練監督となる。
藤子:良造が故郷から連れ出し、戦後に結婚しようと考えていた想い人だったが、戦後に別の男とおり良造は「裏切られた」と思っている。
富士号:良造の愛馬であり、良きパートナー。
オレーナ・オリャフロージュスカ・アポーストル:ウクライナ・コサックの公女。家の再興のために良造と婚姻するために日本に単身やってきた。新田と発音できず「ニタ」と呼ぶ。
クロパトキン:ロシア側の将軍。良造を気に入り、オレーナを送り出した。
イトウ:内務省の役人で、変装の達人。
トウゴウ:オレーナが連れてきたペットのシベリア犬。駄犬。
「凍土のカナン」の感想
騎兵たちの犠牲により、「ひとときの平和」を得た、不穏な空気がただよう日本で戦争によって傷ついた心を抱えた騎兵大尉の新田良造。
『マージナル・オペレーション』のアラタとどこでつながるんだろうなー、と想像がはかどります。
新田は「にった」と読んでいるのですが、ロシアへの旅で偽名「アラタ」を名乗っていたので、そういうことなのかなー、と。
原作のほうは未読なのですが、金髪碧眼のかわいらしいウクライナ美少女が「嫁になってやる!」と自宅に乗り込んでくるという、男のロマン(笑)
広いおでこがチャームポイントの、ちょっぴり気が強い女の子って好きなひとがたくさんいそうです。
日本文化が気に入った様子のオレーナの新鮮な反応が、「ユーは何しに日本へ?」的で面白かったです。
ガンガン、オレーナのほうから「結婚!結婚!」と迫っているにもかかわらず、良造が淡々と紳士的にかわしていくのがニマニマ。
お人好し、というよりは無欲で自己犠牲精神が高い性格。マージナルのアラタも、そういうところがありますよね。
戦争でいろいろなものを失って、からっぽになりかけていた良造が、突然現れた押しかけ女房ならぬ自称婚約者の少女をロシアまで送り届けようとしたことを発端に、歴史の大渦に巻き込まれていきます。
本人が望む望まないにかかわらず、国家の大事に利用される良造に課せられた使命が、まさかの極東における新国家の建設とは。
ロマンスあり、政治あり、使命と裏切り、異国の風を感じられる歴史漫画であり、オレーナと良造のこれからの旅が楽しみです。
なお、本作は『マージナル・オペレーション』未読の方でも楽しめる内容ですよ〜
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