松崎夏未先生の漫画「ララバイ・フォー・ガール」は、「世の中、バカばっかり」と世の中を斜に見る優等生・かなと、かなと正反対に見えるギャル系女子高生・ゆきなとのガール・ミーツ・ガール物語です。
ゆきなとの出会いにより、冷めた目で世界を見ていたかなの価値観が変化したものの、逆にゆきなは「お利口さん」になっていきすれ違いが生まれます。
こちらではあらすじと感想をご案内します。
「ララバイ・フォー・ガール」のあらすじ
大人になったかなが、思い出すのは女子高生だったころの出会い――
お嬢様学校に通う結生かなは、制服も校則通りに着ておさげ髪をきっちりと結わえた優等生だった。
クラスの女子たちは先生に怒られるとわかっていながらも、規則を破り、髪を染めて化粧もする。
何度怒られても、反省しない。
バカばっかり・・・
親や先生に保護されるしかない学生なんだから、大人になるまで我慢して、適当に従って生きるほうが楽なのに。
かなにとって、世界は脳みそ空っぽな子だらけに見えていた。
だがある日、予備校で一緒の教室の、見るからにギャルな玉手ゆきなが話しかけてきた。
フルメイクにつけまつ毛と染めた髪にパーマ、頭の中身はメイクすることでいっぱい、という自分から遠い人種。
の、はずだったが、ゆきなと一緒に過ごす時間が意外に心地よいことに気づく。
大口いっぱいあけて頬張ったハンバーガーのおいしさ。
好きなことを120%で楽しんで、今を一番に生きたい、というキラキラした彼女。
いつの間にかゆきなに感化され、「優等生」からはみ出していくかなは・・・
「ララバイ・フォー・ガール」の感想
女の子同士の青春、不安定な思春期に揺れ動く女の子たちの心が画面から伝わってくるような作品。
学生時代に「かな側」の人だったら、なぜかなが大人に適応していくゆきなに怒ったのかが、すごくよくわかると思います。
「規則を破って、今一番好きな自分でいられる自由」を自分に教えてくれたはずの存在が、自ら「大人たちの不自由さと型にはまろうとしていく」のを見ると矛盾している!と裏切られたような気持ちになりますよね。
客観的に見ると、ゆきなは普通の女の子の一番いい生き方を選んでいるんですが(子供でいられる間にハチャメチャして楽しんで、大人になるべきときが来たらふさわしく成長するタイプ)、かなは逆のタイプ。
かなの場合は、大人に抑圧された子供時代を送り、みんなが大人になるころに反抗期が来たというのか、中途半端に子供の心を抱えて大人になりきれないタイプだったりします。
大人に反抗しても無駄だ、とやりたいことや夢を最初からあきらめて生きてきたかなは、周囲の子たちを内心でバカにすることで自分を正当化していました。
かなにとっての憧れ、というか恋に近い憧れを抱いたのが「ゆきな」という存在で、全力で大好きだったからこそ彼女のようになりたい!と強く願っていて、変われたのだと感じます。
すごく生き方が不器用で、だからこそ青春が輝いていて、本当にまぶしい。
ラストで大人になったふたりが再会して、「最強の自分」そして「素敵な女性」として再度、友達になれたんだろうなあって思うと胸があたたかくなりました。
なお、この作品は短編漫画集になっており、表題作のほかに「今夜、ヴォーグのフロアで」「お寺の道子ちゃん」「EVER GREEN UTOPIA」という女子同士のお話が収録されています。
どのお話も、胸にぎゅーっとくる作品になっていますよ〜
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