つぶれてしまった須賀屋から、一流の大店「東陽楼」へ移ったチヌ。
源氏名を「小菊」から「千鳥」に改め、チヌが若様に気に入られていることを見抜いた楼主が、若水公三郎をチヌの旦那にしようと画策します。
ところが、東陽楼の一の太夫である紅緒が若様に惚れていたことで、チヌはにらまれてしまうように。女たちの陰湿なイジメの中でチヌは精一杯頑張りますが・・・。
作品名:声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~
作者:安武わたる
「声なきものの唄」第三話 あらすじとネタバレ
東陽楼で「千鳥」になるチヌ
若様にかわいがられるチヌ
チヌが若様に気に入られている、ということは女郎たちにもすでに広まっており、しょっぱなから嫉妬の目を向けられた。
早速、東陽楼の「お職(最上位)」である紅緒の下で、「千鳥」と名前を変えて2ヶ月後に「初見世」を大々的にやるためにレッスンを受けることになる。
「若様が女嫌い」だという話は、廓中の女たちが体当たりでアタックしてもまったくなびかないことから噂が広まっていた。
遊郭の主たちは若様から土地を借りているため、何とか女郎を通して若様を籠絡しようとしていたが、一向に興味を示さなかった。
その若様が、なぜかチヌにだけは心を開いて気に入るそぶりを見せている。
そんな話を、もちろん先輩女郎たちがおもしろいわけはない。
若様にヒイキされていることが許せない先輩たちは、チヌを寄ってたかって折檻した。
「声なきものの唄」第三話の感想
「千鳥」として一流の店で女郎のスタートを切ったチヌでしたが、女郎たちの境遇からすると非常に恵まれていたようです。
権力がある、若くハンサムな公三郎にも気に入られ、そのことで先輩の嫉妬を買って嫌がらせをされたりとひどい目にあってしまいます。
先輩の嫌がらせで髪を結わない姿で現れたチヌは、かえって目立ち「洗い髪の千鳥」として名前を広める結果に。
けれど紅緒太夫も気の毒な女性で、賭場で借金を作ったろくでなしの父親のために売られ、苦労していたのにさらにまた借金を負って好きでもない男に身請けされて去っていってしまいました。
「身は買われても、心はうちのもの」
と、女郎であるがゆえに、愛する人に愛しているとも言えず、ままならない運命を受け入れて生きていくしかない辛さが伝わってきました。
チヌも苦労知らずなわけではなく、過酷な運命に翻弄されているひとりですが、遊郭にいる女郎たちはそれぞれに苦しい事情を抱えながらもその生き様に女性として生きる強さを感じさせられました。