何者かにさらわれてしまった後藤田の妹・朱鷺子。海運社主の兄がおり、良家の奥方におさまっていた朱鷺子にとって、耐え難い出来事が・・・。
声なきものの唄〜瀬戸内の女郎小屋 第22話「屈辱」では、傷つけられた朱鷺子とその心を救ったチヌと若様。
そして、兄である後藤田の怒りと復讐。さまざまな思いが絡み合い、涙するお話です。
「声なきものの唄」第22話 あらすじとネタバレ
後藤田に恨みを持つものに襲われた朱鷺子の屈辱
朱鷺子がさらわれてから数日、偶然、東陽楼の下女がお使いの途中で怪しげな一団が連れていた朱鷺子を見かけたという情報が入り、居場所をつきとめた。
だが、そのときはすでに朱鷺子はボロボロにされていた。
チヌや東陽楼の人間が皆で朱鷺子を介抱し、後藤田も駆けつけたが、
「うちゃ、もう汚れてしまったんや」
と、朱鷺子は泣き叫ぶばかりだった。
女の哀しさと弱さに悩み苦しむチヌと朱鷺子
後藤田の本宅と会社に放火され、身一つになった後藤田は恨みを買っている自分のもとではまずいから、と朱鷺子を東陽楼に預けた。
朱鷺子は悪夢に苦しみ、起きても錯乱したように泣いてひどい状態で、チヌは自分が初めて女郎になったときの苦しみを思い出した。
カタギの女にゃキツイ、というが、たとえ女郎だとて苦しいものは苦しい。
「あんたの代わりやて、笑うて教えてくれたわ!」
朱鷺子の話では、襲ってきた連中は後藤田への仕返しのために、妹である自分かチヌのどちらでもよかったと言っていたというのだ。
「どうしてあんたやなかったんや」
女の弱さと哀しみゆえに、ぶつけられた怒り。
チヌは自分が代われたらよかったのに、と涙を流して、言い過ぎた朱鷺子は自分を恥じた。
「人は他人によって堕ちたりしない」という若様の言葉
街で朱鷺子の噂が流れ、そのあまりの恥辱に自ら命を断とうとする朱鷺子。
喉元に届きそうな刃を止めた若様は、朱鷺子に「あなたは元のままですよ」と諭す。
他者に体を奪われても、人はそんなことで汚れはしない、と。
自分自身を見捨てたときに、初めて人は「堕ちる」のだと・・・
※結末はあなた自身で読んでみてくださいね!
「声なきものの唄」第22話の感想
若様・・・!
久しぶりに漫画を読んでいて、ボロ泣きしてしまいました。
汚れた身でもはや生きていけない、と絶望した朱鷺子でしたが、若様の言葉で救われて生きていく勇気を再びもちました。
人が生きていくためには、「希望」が必要だし、自分自身を汚れた存在ではなく、より良い理想の自分に向上していこうという思いがなければなりません。
若様って、ときどきすごく深いことを言うんですよね。やはり自分が辛い過去を背負ってなお生きようとしているからこその深みを感じます。
朱鷺子の身の上に起きたことを、自分に置き換えて想像してみて若様の言葉を聞いたら、わんわん泣いちゃうよ・・・
チヌは借金のために「仕事」として女郎をしているわけですが、カタギだろうと商売だろうと女性としてみじめで耐え難いことです。
割り切ってはいても、ときどきどうしようもなく苦しく、悩むことはある。
朱鷺子の絶望を見たチヌは、昔の自分を思い出しながらも、朱鷺子を思いやって自分が代わってやれたら、と本気で思ういい子です。自分はもう、慣れているからと。チヌがいい子すぎて辛い。
でも、女性に対してこういう考え方をする若様をチヌは慕っているわけで、将来若様と結ばれる日がきたら、きっとチヌも幸せになれるだろうなあ。
早くチヌを幸せにしてあげてください♪
後藤田も、自分のこれまでの悪事の不始末をつけ、朱鷺子の復讐を果たしたあと再出発。朱鷺子はすっかり立ち直って本当に良かったです。
朱鷺子の東陽楼の女郎たちへの見方がすっかり変わってしまい、兄の嫁にチヌか巴姐さんを、とまで考えるようになったのにはクスッと笑いました。
今回のお話は、「声なきものの唄」でも一番感動しました。神回です。
いろんな女性たちに読んでもらいたい内容でした。