女郎にさせられ、絶望して故郷へ帰ろうと海に入ってしまったチヌ。
溺れて遠のく意識の中、魚釣りをしていた「若様」こと若水公三郎に命を助けられます。
地元の有力者である若様と縁を持ったチヌは、無邪気なところを気に入られてしまいます。
そして先輩女郎が病に倒れ、彼女を休ませるためにチヌは自ら女郎として見世に出ると決めますが・・・
家族のために遊郭へ売られてきた女たちの、辛くやるせない思いが見え隠れするお話です。
作品名:声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~
作者:安武わたる
「声なきものの唄」第二話 あらすじとネタバレ
若様に助けられたチヌ
「足抜け」は本来懲罰を受けなければならなかったが、若様のはからいにより不問とされたチヌ。
この出会いが、チヌの今後を大きく左右するものとなりました。
矢津遊郭で誰も頭があがらない、地元の名士である若様の後ろ盾をうけるように。
ハンサムで親切な若様に、チヌならずとも惚れてしまいます♡
若水公三郎との出会い
海に入ったチヌは、気づくと綺麗な顔の男性に助けられて舟の上にいた。
チヌの姿から彼女が女郎だと気づいた青年は、「須賀屋」へ連れていき、手当を受けさせた。
チヌは助けてくれた青年が若水家の当主・若水公三郎だと知った。
この辺一帯の地主で、借りている遊郭の主たちは誰も逆らえない。
「若様」と呼ばれ、尊敬されているお人だった。
「声なきものの唄」第二話の感想
やさしい美男の若様に助けられ、チヌは新たな気持ちで生き直そうとします。
けれども、小梅は本当に不幸な女性でしたね・・・。
明治時代、廓は国に認められており、警察の管理下のもとで「競り」が行われていました。
貧しい農村では、息子よりも娘が生まれて喜んだとか。
「息子の稼ぎはたかが知れているが、娘はその何倍も稼ぎ出せる」
親が子の誕生を喜ぶのはいいものですが、喜ばれる理由が将来遊郭へ売られていくことで大金が手に入るから、では何とも言えない気持ちになります。
土地も財産もない貧乏な家庭では、庶民にとって最後の頼みの綱であっても、悲しいことです。
さて、チヌは期せずして最下層の遊郭から、一流の遊郭へ移ることに決まりました。矢津遊郭一の大店「東陽楼」です。
そして若様の後ろ盾を得て女郎としてどのように上り詰め、成長していくのか。覚悟を決めたチヌの、たくましさがこれから発揮されます。