安武わたる先生の「声なきものの唄」第17話「変身」では、チヌと別れたあとのサヨリの「その後」の過去が描かれています。
もともと器量良しで落ち着いた性格のサヨリは、瀬島によって一人前の「女」に変身させられてしまいます。そして、チヌのことをすっかり忘れてしまって・・・
「声なきものの唄」第17話 あらすじとネタバレ
瀬島に仕込まれるサヨリ
サヨリは宿でまるで姫君のような歓待を受けたあと、瀬島と部屋で眠る。
瀬島はサヨリの顔を触りながら、涼しい目に柳眉、通った鼻筋だと褒め、「いい妓の条件や。全部そろうとる」と言う。
そして今日の贅沢など、これからは「普通」になるのだ、おまえの今日からのなりわいは男を悦ばすことだと言いながら、「仕込み」を始めた。
「この世に、こんな悦楽があるなんて」
サヨリは、もう瀬島のトリコだった。
骨抜きにされ、瀬島なしではもういられないようになる。
色香漂う「お香」に変身
サヨリは瀬島に「お香」と名前をつけられ、一夜のうちに色香ただよう美女に生まれ変わっていた。
キレイな顔立ちの素朴な漁師の娘から、男の目を集めるひとりの美しい「女」に。
瀬島はそんなサヨリを見て、「女はな、己に快楽を与えてくれるモンを本心からは嫌えない」と、サヨリをクルマに乗せる。
サヨリの頭の中から、妹の「チヌ」の存在はかき消えていた。
今目の前にいる男だけが、すべて。
そんな二人を見送った宿の女将は、瀬島が「わしがこの世で一番憎んどる女が、母親じゃ」と言っていたことを思い出していた。
死神と呼ばれる女
サヨリは、瀬島の言いなりにつぎつぎと旦那をもった。
何人も、入院して亡くなったり変わっていくためいつしか「死に神お香」とあだ名されるようになってしまう。
瀬島は旦那が変わるたびに「ようやった」と褒めてかわいがってくれる。
そのためだけに、サヨリは仕事をこなしていった。
生まれ故郷も忘れた、昔のことなどもういい。
瀬島だけが、今のサヨリが頼り帰る場所になっていた。そしてチヌのことなどみじんも頭になかった。
謹慎処分で下働きのチヌ
東陽楼では、チヌが奉納舞での不始末のために表向き謹慎処分となっていた。
「お望みなら、旦那としてのお立場も解消させていただきます」
楼主にそう言われるが、若様はそんなつもりはない。
実際には「下働き」をさせられていたが、若様はそれを知らず仕方なく帰っていく。
姉のことを思うチヌ
チヌは女中頭のおクマにやたらとこき使われていた。
おクマはなぜか、女郎に対して強い憎しみをいだいていた。
下働きはそれなりに辛いが、それよりも姉のサヨリのことばかり気になり、涙するチヌ。
それに、若様がチヌの旦那をやめるかもという噂話を聞いただけで、あれほど言い寄ってきた後藤田が「魅力半減」と言っているのを聞く。
何もかもうまくいかず、落ち込むチヌだったが、栄太に励まされサヨリはきっといつか自分に会いにきてくれるという希望をいだいていた。
「声なきものの唄」第17話の感想
チヌは姉のことを片時も忘れませんでしたが、サヨリはほんの3日でチヌのことを忘れてしまっていました。
瀬島という男は色事師で、女を夢中にさせるテクニックをもっておりおぼこいサヨリを一瞬でトリコにさせた怖い男。
サヨリ自身、瀬島に恋をしてもう初めての想いに我を忘れ、やさしかった性格まで変わり「死神」とまで言われるほどの女郎になってしまいます。
チヌの場合、女性をひとりの人間として扱ってくれる知的でやさしい若様が旦那になってかわいがってくれましたが、サヨリは恋をしてはならない男に恋をしてしまった、という展開。
自分を食い物にする男に惚れて、妹のことも忘れ、ただひたすら言われるままに女郎として仕事をする冷たい女に変身したサヨリ。
今でも姉のことを信じているチヌが、かわいそう・・・しかも、あの後藤田、腹が立ちますね〜! 引き離された姉妹は、これからどうなっていくのか次のお話が気になります。