漫画「片想いの牢獄で」ミズタマ作、4つの短編が収録された漫画から第1話「光のさすへや」をご紹介します。
受験のプレッシャーからノイローゼになり、性格が歪みきってしまった兄から虐待される少女・比奈子。
彼女に光をもたらしたのは、ある少年へのほのかな『片思い』でした。
第1話のあらすじ
兄から虐待を受け、逃げるように犬の散歩をしていた比奈子が、引きこもりのクラスメイト・小日向と知り合い、自分が兄からひどい虐待を受けていることを打ち明けます。
とっくの昔に社会のレールから外れた人生を歩んでいる小日向は、比奈子を守るために「世間体」など必要としなかった。
二人は恋愛関係にはならなかったけれども、そこがまた微妙な空気感があってよかったです。
虐待を受けていた女の子
中学生の朝倉比奈子は、同じ部屋の兄からひどいモラハラ・虐待を受けていた。
母が「お受験」に夢中になり、兄を追い詰めた結果としてそのプレッシャーからくるストレスをすべて妹にぶつけて解消しているのだった。
言葉だけなら無視していればいいが、次第にそれはエスカレートしていき、比奈子は逃げ場もなく苦しんでいた。
ある日、学校にずっと不登校だった小日向という男子が来ていた。
同じクラスとはいえ、ずっと来なかったので比奈子は彼のことを知らなかった。
だが、ひょんなことから比奈子は彼と知り合いになってしまう。
兄の虐待から逃れて犬の散歩に出た夜、犬のソラが逃げ出して見つけてくれたのが小日向だったのだ。
感想と考察 比奈子の片想いのゆくえ
比奈子が小日向のことを好きになったのは、いつだったのでしょうか。
大好きなソラに対して、真剣に仲良くなろうとしていた素朴な姿を見てからか。
それとも、父親のいる田舎とそっくりだというあの、プラネタリウムを見せてくれた瞬間なのか。
田舎へ行く、と引っ越す小日向に恋するすがるような目で「小日向!」と声をかけた比奈子。
でも、恋に鈍い彼は、そんな比奈子の想いにはまったく気づかず、ソラにだけ満面の笑顔で頭をなでて去っていってしまいました。
不登校で引きこもりの中学生というだけあって、恋愛にはにぶい様子の彼。
でも、友達として比奈子を守った彼の純粋さが感じられて、逆に「素敵だ」と思えます。
想いも告げられないままに、自分を助けてくれた小日向を見送った比奈子は、もう前のような親の操り人形には戻らず、「嫌なものは嫌」と言える子になっていたし。
恋のよすがは、小日向が最後にプレゼントしてくれたプラネタリウムだけ。
片想いはどこにも行き場がなく・・・