厄介なわりに金にならず、倒しても何の栄誉も得られない・・・と普通の冒険者たちが敬遠する「ゴブリン退治」のみをひたすら引き受ける銀等級の冒険者「ゴブリンスレイヤー」の物語。
漫画「ゴブリンスレイヤー」蝸牛くも(原作)黒瀬浩介(作画)は、世界にはびこる凶悪なモンスター・ゴブリンを延々と狩りつづけるゴブリンスレイヤーと、彼と出会った人々が織りなすダークなファンタジーです。
こちらでは各巻のネタバレを最新巻までと、その魅力をお伝え致します。
「ゴブリンスレイヤー」各巻のあらすじ
なお、この作品ではキャラクターに個人名はなく、「役職名」で呼ばれています。
第1巻
ゴブリン退治にさっそうと出発した、新米冒険者が4人。修行の成果を発揮してみせると張り切っていた4人だったが、勝手を知らぬゴブリンの巣窟でパーティはあっという間に壊滅。
絶望にふるえる女神官の前に現れたのが「ゴブリンスレイヤー」だった。襲いかかるゴブリン共を慣れた様子で全滅させ、女神官と女武闘家の命を救った。
心底おそろしい経験をした女神官だったが、それ以来、ゴブリンスレイヤーについていくようになる。
第2巻
ゴブリンスレイヤーの噂を聞きつけた上森人(ハイエルフ)である妖精弓手は、仲間の蜥蜴僧侶、鉱人道士(ドワーフ)と共にギルドまで彼を探しにきた。魔神王復活にともない、森人の土地でゴブリンが活性化してきているので手助けを求めにきたのだ。
ゴブリンの巣にて上位種のオーガと出くわし、仲間たちと一緒に戦うが苦戦する。
第3巻
先の戦いでかなりのダメージを受けたゴブリンスレイヤーは、牛飼娘のもとで体を癒やす。女神官は十位から九位に昇級した。だが、牧場がゴブリンの襲撃を受けることがわかる。逃げない、という牛飼娘のために、ゴブリンスレイヤーは自らの力を超える圧倒的な大群を前にギルドの冒険者たちに助力を請う。
ゴブリン退治を通して、無口で不器用なゴブリンスレイヤーのことを理解した妖精弓手たちを筆頭に、ギルドの冒険者たちが牧場を守るために立ち上がる。
第4巻
皆の力を借りてゴブリンの大群撃退を成し遂げたゴブリンスレイヤーは、「冒険者になりたい(のかもしれない)」という願いを口にした。
妖精弓手に借りを返すために、森の遺跡のクエストに同行したゴブリンスレイヤーは、そこにいるゴブリンたちの装備が整っていすぎることに気づく。
そして、ゴブリンスレイヤーのもとに伝説の英雄と呼ばれる「剣の乙女」からの依頼が届き、下水路のゴブリンの巣に挑む。
そこには剣の乙女の「ある思惑」が絡んでいたのだった。
第5巻
小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)の軍勢に手こずらされるパーティ。
あわや、全滅の危機にさらされるが、ゴブリンスレイヤーの不屈の精神力と過去の忌まわしい記憶から得た執念によって撃退する。
自らも手傷を追ったゴブリンスレイヤーは、「法の神殿」に運ばれて癒やしの奇跡によって命をつないだ。
そこで「剣の乙女」は意味ありげに「ゴブリンへの恐怖」を語り、助けを求めた。
再び、洞窟を訪れた一行は、「大目玉」の化物と対峙するが・・・
第6巻
水の街編完結。絶体絶命の状況から、仲間たちの力を信じて戦い抜き、地下のゴブリンを倒したゴブリンスレイヤー。
《転移》の鏡からゴブリンが湧いていたことや、沼竜の意図的な出現から、ゴブリンスレイヤーは「剣の乙女」がすべてを知っていたのだろうと問いただす。
過去の「小鬼」の悪夢に囚われていた「剣の乙女」は真実を語り、悪夢から救い出してくれたゴブリンスレイヤーを慕う。
街へ戻ったゴブリンスレイヤーは女神官とふたりでゴブリン退治へ。
牧場では牛飼娘が帰還をまちわびており、ギルドでは受付嬢が祭へ「彼」を誘おうとそわそわしていた。
「ゴブリンスレイヤー」の魅力とは
異世界系のようなチートやキラキラ系とは無縁の、ほんの一瞬で奈落の底に叩き落とされてしまう骨太ダークファンタジー。
まさに「ザ・漢」と言っていいほどの、主人公のゴブリンスレイヤーのストイックさに惚れます。
「バットマン」みたいな、悪に立ち向かうために非情さを身に着けた、ダークヒーローの魅力にあふれています。
姉と故郷の村を破壊された復讐のため、というよりはゴブリンスレイヤーには憎しみよりもむしろ「使命感」のほうが強く感じられますよね。
誰かがやらなければならないことをやっているだけだ、という淡々とした雰囲気がたまりません。
お互いに決して相容れることのない「人間」と「ゴブリン」という種族との、生存を賭けた命のやりとり。
良いゴブリンは、人前に出てこないゴブリンだけだ。
というゴブリンスレイヤーの言葉に、すべてが集約されています。
この漫画の世界観ではゴブリン自体は弱小で「国が動くほどのモンスターではない」と、なまじ定義されているがゆえに、貧しい村が襲われても誰も助けてはくれません。
そのせいで、ゴブリンスレイヤーの村も壊滅したわけで、救いの手がどこからも現れないその絶望は「彼」の原風景となっています。
だからこそ、成長したゴブリンスレイヤーはかつての自分と同じ立場にある村人たちの「救い手」となってゴブリン専門の狩人となったわけです。
誰からも見捨てられた人々を守り、なんの称賛も富も求めず、危険を厭わずにゴブリンの巣穴に挑む彼。
ゴブスレさん、かっこいい・・・♡
無口で積極的に他人に関わろうとしないゴブリンスレイヤーですが、人を拒絶しているわけではありません。
自然に彼の素朴で信頼できる人柄が周囲にも伝わり、色恋沙汰はナッシングなんですがみんなからモテモテですよね。これも魅力かな、と。
ギルドの受付嬢からは、誰も引き受けたがらない依頼を引き受けてくれるということで感謝されているし、「信頼できる人物」として昇級審査員に選ばれるほど。
牛飼娘を始めとして、気難しい妖精弓手たちも「仲間」扱いしてくれているし、最初は変人扱いしていたギルドの冒険者たちですら牧場襲撃事件で力となり、ゴブリンスレイヤーの対ゴブリン戦闘の経験値の深さには脱帽しています。
「ゴブリン退治」というひとつの道を極めたことで、事実上最上級の銀等級にまでなったプロフェッショナルのゴブリンスレイヤーには個人の能力によらない、努力を続けた者のすごみと、真の強さが宿っています。
「生まれつきすごい能力を授かって無双!」系のお話ではなく、ひとつひとつ経験値を積んで強くなっていく漢の姿のかっこよさがにじみ出る作品です。
ゴブリンスレイヤーの少年時代から始まる外伝も同時発行されていますので、そちらも要チェックです!
彼が「ゴブリンスレイヤー」と呼ばれるまでの前日譚