どこにも居場所がない、と不良集団に流されるようにつきあいながらも、温かい言葉を求めて鉄男とメールするナツミ。
なぜ、ナツミは刹那的に生きるチンピラのケイタと一緒にいるのか? それは彼女の複雑な家庭環境にありました。
家にも外にも自分がいられる場所がない、と根無し草のように漂うナツミには半グレのケイタしか自分を必要としてくれる存在がなかったのです・・・
作品:「ジェノサイダー」
原作:宮崎摩耶 漫画:秋吉宣宏
既刊:全4巻完結。
「ジェノサイダー」第1巻2話「有耶無耶」あらすじとネタバレ
カリスマ主婦の娘だったナツミ
ナツミの自宅は、大きくて豪奢な一軒家だった。
自宅に帰るとマダム気取りの母親が「出版社の方が取材にいらしてるの。今度ママの特集を組んでくださるそうなのよ」と笑う。
今をときめくカリスマ主婦・・・それが有名人の母親の世間でのイメージであった。
「綺麗なお嬢さんですね!美人親子で売り出せるんじゃないんですか?」
無理やりお客に挨拶させられたあと、さっさと自室へ向かうナツミ。
だが、母親は「変な服、全部捨てておいたわよ」
と平然と言う。
あんな服を着ていたら、ママが悪い母親だと思われるから、と。
有名人のママに恥をかかせないで、というのだ。
他人の前では「自慢の娘」と言いながら、母親は一度もナツミ自身を見てくれることはなかった。
居場所がないと泣く
その心のむなしさを埋めるかのように、ナツミはケイタのもとで美人局の手伝いをする。
そして、ケイタの道具になり、用が済んだら「おまえ暗いんだよバカ、出てけ邪魔だから」と追い払われた。
「どこにも、どこにも、居場所がないよ」
自分がここにいていい、と思える場所が見つからない。
やるせない気持ちをメールすると、鉄男からすぐに返事がきた。
鉄男は映画のセリフだけど、と「本当に必要なのは居場所ではなく、自分を許してくれる存在だ」という。
「そんなの、いないよ・・・」
としみじみと泣くナツミ。
ケイタはさっき自分で「出て行け」と言ったくせに、「ナツミ!」と呼び出し、仲間からもさすがに「許してやれよ」とたしなめられるが「俺のモンを俺がどうしようと、俺の勝手だろーが!」といきがっていた。
「ジェノサイダー」第1巻2話「有耶無耶」の感想
若く美しい、有名人のお嬢様で、頭もいいナツミが、なぜ社会の最底辺にいるようなどうしようもないクズのケイタと一緒にいるのか。
その理由が明かされました。
父親の影はなく(離婚?は不明)、カリスマ主婦と世間でもてはやされている母は、自分の評判だけを気にするザーマス奥様で、娘に愛情はナシ。
豪邸に住みながらもそこに「居場所がない」と感じ、外で「自分を必要としてくれる」のがケイタだった、というわけです。
そのケイタもナツミを本当の意味で必要としているわけではなく、いつでも自分の言いなりになる便利な女、という所有物的な扱いしかしません。
どこにいても、温かい居場所がない、というさみしさを抱えるナツミは、心が荒れているために不良の真似事をしていたのでした。
やっと彼女が求めていた「あたたかさ」「居場所」をくれそうな存在が、鉄男で、ナツミは顔も知らない彼に無意識のうちに救いを求めるようになっていきます。